電子カルテの最近のブログ記事

電子カルテのその後

1年4ヶ月前に飛び立ったセスナは飛びながらたくさん部品がついて、だいぶ使いやすくなりましたし、なくてはならないものになりました。

教育もうまくいき電子カルテがかけないという苦情はもちろんこのことでの退職者も出ていません。

ただ、一方細かい部品がつきすぎて何がどこにあるのやら分かりにくくもなってしまいました。

必要に迫られて絞りに絞って、時間をかけてつけた部品でも使い始めると予想に反して意外と使わないというものが結構出てしまいます。時間がもったいない。・・・・

思いつきもあるしよく練られた要望もあります。

実際のプログラム作成に取り掛かる前に、必要性は何か?その背景の業務整理ができているか?

実現したときのメリットはなにか?どれぐらいの広がりがあるか?このことをいつも考えています。

電子カルテについて

牧和会では普段から院内の電子化に取り組んでいますが、2007年8月1日に自作の電子カルテが稼動しました。

カルテの特徴
  • 牧和会内だけで使える自作のカルテ
  • 1利用者生涯1カルテ
  • WEBベースのテキスト入力とオーダリングシステム
  • 使いながら改良していくカルテ

牧和会で初めて院内の電子メールが使われた1999年12月24日から、電子カルテ稼動の2007年8月1日まで7年近くかかりました。
実は私はずっと以前からチーム医療を行っていくうえで、診療記録(カルテ)についていくつかの問題を感じていました。

  1. 診療情報をチーム内で共有して検討するにはチーム全員が集まって、カルテを誰かが読むしかなく手間と時間がかかること
  2. カルテをあちこち必要な場所に運ぶには手間と時間がかかる
  3. カルテの字が読みにくい場合がありミスにつながりやすいし、確認に手間がかかる

それでもカルテ自体は良く書いていて、手間と時間さえかければかまわなかったのですが、工夫を重ねた情報共有のためのノートやシートは、一つの病棟の分だけでも膨大になり、広げると4畳半ぐらいにはなりそうでした。こうなるとノートやシートの記載も整理も大変で何をやっているかわからない感じも出てきました。そういうわけでチームで機能的に動くためになにかいい方法はないものかと思っていました。とにかく情報がスムースに通るようにという観点から院内にLANのネットワークを引き電子メールと掲示板からはじめました。そのころ注目し始められていた電子カルテは導入費用が1ベッドあたり100万と言われていました。(注:1)欲しかったけど、とても高くて手が出ませんでした。さらにこまったことに、当時の私にはプログラミングやネットワークに関しての知識がなかったので、いろんな売りこみを聞かされても、その価値が良くわかりませんでした。仕組みの価値がわからないまま使うというのは大変危険なこと(注:2)で、ベンダーと組んでつくることも一部分でやってみましたが、逆に医療の世界とIT関連の世界はまるで違うということを痛感させられました。
注:1今は少しは安くなっていますが、依然高いと思います。
注:2このことに関しては最近大きな社会問題がおこりました。某大手IT企業が政府に売り込んだというか政府が買ったシステムがレガシー(伝説的に古い)システムでメインテナンス料や修正料などがとても高価であることがわかり国民全体に大きな不安と怒りを呼びました。売ったほうは、その世界のビジネスだったのでしょうが、買ったほうはお金があった上にその世界のビジネスを良く知らなかったのではないかと思います。

映画ではないですが、私は、ちょうどジュラッシックパークに迷い込んだ人間のような感じだったと思います。このIT関連の業界は肉食恐竜が跋扈しているように思われました。さらに使い勝手が今ひとつだからとプログラムを変えるだけで、新たに費用が生じることもわかりました。そして、大手から売られているカルテはとても格好よく見えました。ちょうどジャンボジェット機のような巨大で完成されたシステムで、最近ではすぐに離陸できそうなものも出てきました。それでも、私が思うレベルで精神科の特殊性に対しては対応が不十分で、逆にあまり必要のない機能もついていて、費用面も含めて職員のいろいろな質改善や効率化の提案を受け入れる余地はなさそうでした。
一方で、コンピューターの性能はどんどん良くなって安くなっていくし、 新技術も次々登場してきます。基本的には技術ですから原理があり、それを理解して使えば費用は最小限ですむはずです。
実際に診療所向けのカルテを自作された吉原先生に入院で使えるようにかえていいかどうか相談してみましたが、入院には使わないで欲しいと断られました。また、大阪で診療所を開業していた高校の先輩である松岡先生がこの吉原先生のカルテを使っておられたので、いろいろ相談したところ、「なら、自分ででつくっちゃえばどうや!」と背中をおしいただきました。
それならと、吉原先生の考えに習って、プロペラのセスナ機のように小型でもいいから、基本機能がしっかりしており、飛びながら改良できるカルテを作ろうと狙いを絞ってやってきました。ライバルは売り上げ数兆円で世界でも有数の多国籍企業であるIT業界大手です。まるで蟷螂の斧、ドンキホーテのような試みですが、自分たちは「竹やり戦術」とよんで、自分たちの、自分たちによる、自分たちのための(どっかで聴いた言葉ですが・・・)電子カルテ作成に真剣に取り組み始めました。

この自作カルテは看護師2名(1名は上級システムアドミニストレータ)とシステムプログラマー1名と私で勉強しながらオーダリングシステム(注:3)から取り組み始め、「1利用者生涯1カルテ」「法人内で共有」「診療データが取れる」「強固なセキュリティ」を合言葉にこつこつと作ってきたものです。私も、本格的にWEBプログラムを勉強して実際に書きたかったのですが、口惜しいことに時間が足りなくてできませんでした。
できあがった自作カルテは、まだまだ未完成な部分もあり使い勝手も今ひとつですが(注:4)使いながら改良していけるようにという前提でやっと使用開始にこぎつけました。
注:3薬剤の処方や検査の依頼をシステム上で行うこと
注:4未完成な部分が多いので、現在のところ販売したり、お分けしたりする予定はありません。

というわけで2007年8月1日ようやく自分たちのセスナが離陸しました。

現在、この自作カルテは牧和会にある120台あまりの端末で日々動いています。今後、このカルテを改良しながら使い続け、全職員で質改善と効率化にとりくんでいくなかでいろんな発見があるのではないかと楽しみにしています。